題名: Morphology and the soil faunal communities of forest litter layer under three different vegetation(3つの異なる森林植生下におけるAo層の形態と土壌動物群集)
背景と目的: Ao層(堆積腐植層)は植物遺体およびその分解過程にある有機物の層である。それは土壌動物に住み場所とえさを与え一方で土壌被覆物としての役割も指摘され多面的に注目される。Ao層の堆積形態は地形、気候、植生、人為などの影響を受けて多様であり、その実態を把握することは森林生態系内の様々なプロセスを理解する上で重要である。本研究では特に植生の影響に注目し、1.異なる植生下のAo層の堆積形態を現場観察と薄片の観察から直接的に捉えること 2.生息する土壌動物群集の把握と、それらが分解速度に及ぼす影響を考察すること3.堆積腐植層が持つ水分特性として滞留量を評価することを目的とした。
調査地の概要と調査項目: 調査地として京都府宮津市上世屋地区の山林に以下の3つのサイト;1.ブナサイト(ブナを代表とする広葉樹林)、2.ナラサイト(ナラを代表とする広葉樹林)3.スギサイト(50年生の人工植林)を設定した。調査サイトは第三紀のレキ岩を母材とし、いずれも標高600~700mの尾根上部緩傾斜地にあり、土壌は褐色森林土に分類された。
98年の5、7、9、11月にAo層の集積量とその含水量、小型節足動物(以下土壌動物とする)の個体数を求めた。また11月には土壌動物の層位分布を見るためにL層、F層、H層に分けてAo層を採取し個体数を求めた。また各サイトにおける代表樹種のリターの分解速度および葉面積の減少率をリターバッグ法により求めた。この際、土壌動物がリターの変質に及ぼす影響を見るために、リターバッグは土壌動物を排除しない粗メッシュ排除する細メッシュとを用いた。堆積形態の直接的な観察は大型薄片を用いて×10倍で行った。大型コアを用いて不撹乱試料を採取し、人工降雨装置を用いて降水の流出量を経時的に測定して滞留量の評価を行った。
結果と考察: Ao層の厚さはとブナ、ナラ、スギ林でそれぞれ10.5、4.2、7.2cmで、集積量はそれぞれ79、38、49t/haであった。薄片の観察では、ブナの厚いAo層に顕著な累層が見られた。リターバッグによる重量減少の測定から分解速度を求めると、分解速度定数はそれぞれ0.34、0.62、0.5と分解速度はブナ、スギ、ナラの順に遅いことを示す。これはAo層の集積量と対応するものであった。リターバッグの重量減少率は異なるメッシュサイズによる差がなく、重量減少に及ぼす土壌動物の影響は見られなかった。しかし、葉面積の減少率は粗メッシュサイズで大きくなり、土壌動物は、リターを粉砕することで、Ao層の形態形成に影響することが示さた。人工降雨実験から試算した滞留量は、単位体積当たりで計算するとブナ、ナラ、スギの順であったが、現場でのAo厚さを考慮すると、ブナ、スギ、ナラの順となった。ブナ林のAo層は保水力に優れていることが示唆された。これは形態の違いを反映するものと考えらた。